高周波炉の実験(3)




  1. IGBT 方式 高周波炉 の まとめ:


  前章で、ハーフブリッジIGBTモジュールを用いた、40kHz近辺の誘導加熱を実験した。 ここでは、IGBT本来の、20kHz近辺の共振出力になるように回路定数を持っていき、鉄部加熱の専用機にする。(共振コンデンサー: 6μF ×2=12μF) と同時に、大きなワークを扱えるように、内径φ70mm(6T、約2.5μH)大径コイルとした。 共振周波数の単純計算値は約29kHz。
  また、トランス・コアを増強して、3個×2、各9Turn(2.0mm2線) とした。 トランス・コアを入れるので、実際の共振周波数はそれより少し低くなる。一次コンデンサー C1 は、少し減らして5μF(630V)にした。
  電源は、配線やクリップが熱くならないように電圧を上げ、倍圧整流電源とした。(250〜270V程度)
  IGBTモジュールからの電磁ノイズは、測定して無かったので、スナバ回路は特に付けなかった。

  cf. 1/3周波数による駆動実験では、途中の損失が大きく、鉄を赤熱させるほどの実用的な温度まで届かなかった。(C: 1.15μF ×2、 L: 2.5μH より、f = 66kHz、 ∴ 駆動 f = 22kHz) 市販の低周波の高周波炉(低周波炉?)は、鉄のキュリー点以上(700−800℃<)になると、出力を4倍に増して強制的に鉄を溶かす。( ex) 1kW → 4kW


  結果は、 発振周波数 f = 24kHz、デューティー比 35〜40%(最大出力は45%、デューティー比は 4pin(DTC =デッドタイム・コントロール)で決める)として、

                    アイドリング電流(100VAC): 3A   →   鉄るつぼ(50cc)挿入: 13A

となり、そのまま鉄るつぼ(耐熱スプレーをかける)に入れて、アルミニウム等を溶融することができた。

  (* 有害な1次共振の中心が28k〜29kHzにあるので、このすそ野に入った分、3−4Aのアイドリング電流を消費し、コアが少し暖まった。)


    (回路まとめ)  ・・・ IGBTモジュールのゲート駆動回路は 46. 1.(2) 使用

 

 




  2. ZVS 方式 高周波炉 の 改良:


  FETを用いて、周波数を80〜100kHz程度にすると、黒鉛を加熱して局所的に1000℃以上にすることができる。(も同様によく加熱する。) そのため、実験室的な小規模の高温加熱に用いることができる。 ただし、45. の ZVS自励発振高周波炉は、どうしてもFET(IRFP260M、200V・50A)の電流容量が不足し、24V25A以上で頻繁にFETを壊すことになった。(壊れても安価なので、付け替える手間だけかかる。(今の所、秋月で160円)
  そこで、3段パラレルの プッシュプルにし、放熱器を充実させ、また、LC共振回路内に入らないように側面によける配置とした。 各ドレインと 共振銅パイプ線をつなぐ 2.0mm2線はある程度長くし、大電流を流すと発熱して適度な抵抗になるので、各素子のばらつきによる熱暴走を防ぐことができる。
  電源は、36V(24〜40V)・1.2kWの スイッチング電源(アリエク)を用いたが、36V30Aに近づくと、過電流で自動的に止まってしまい、こちらのほうが電流の限界を決める。 このとき、FETは熱くなるが 十分余裕があって壊れないでいる。

  ZVS(Zero Voltage Switching)方式は、IGBTのような周波数の設定も、デューティー比の設定も不要で、電流計(30A)を見ながら、ワークの出し入れだけで発熱量を決める。 発振周波数は、コンデンサー(1.15μF ×2 =2.3μF)と コイルのインダクタンス(L= 1.3μF)だけで単純に決まり、約92kHzとなった。
  因みに、C=1.15μF だけのもの(f = 130kHz)も試したが、黒鉛るつぼでの出力が低くなったので、結局、コンデンサーを 2個にした。 この無誘導共振コンデンサーはMKPコン(〜50kHz)よりも周波数特性が良いと思われ、92kHzでもやや温まる程度だった。

  共振コイルは、以前の内径35mmから、内径50mm・6Tに切り替えたが、24Vの時と同じ加熱をするために、36Vが適正な電圧となった。 ゲート抵抗は、470Ωから 680Ωに替えたので、3段あるのに アイドリング電流は 3A程度に収まった。 ワークを入れて増加分が発熱エネルギーとなる。
  電源を36Vに固定して、ゲートスイッチを入れると、アイドリング電流が流れ、さらにワークを入れると、電流が跳ね上がり加熱が始まる。 6個のFETにゲート・バイアスを与えるレギュレータ(20V1A)は、電源36Vにもなると結構温まるので、写真よりももう少し大きめの放熱器に取り換えた。


  結果は、
  φ25×h25mm黒鉛るつぼ: 15A、 φ27×h40mm黒鉛るつぼ: 14〜20A ・・・ いずれも 銀(Ag、m.p.962℃)が溶ける温度、=1000度以上に速やかになる。
  黒鉛るつぼ、あるいは 黒鉛管に、アルミナるつぼを挿入して、純度を落とさずに銀などを溶解することができる。

  (* 黒鉛は金属との剥離性が良く、熱ショックにも強いが、高温で不純物の金属が溶け込む欠点がある。また何度も使うと酸化してボロボロになる。 一方、アルミナるつぼは高温に耐え、純度も保たれるが、熱衝撃に弱いので、均熱しないで注ぎ出すと破損してばらまいて危険。 透明石英(シリカ)るつぼは、1400度まで耐え、熱ショックに非常に強いが、機械的強度が弱い。)


    (回路まとめ)

  
 
 








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